スマートフォンの普及に伴い、世界中で不要となった電話ボックス。隣国のアメリカ、特にニューヨーク市は「LinkNYC」というプロジェクトで、古い電話ボックスを無料WiFiスポット、充電ステーション、タッチスクリーンタブレット付きのスマートキオスクへと転換させ、デジタルデバイド解消に向けた取り組みを進めています。 しかし、カナダの状況は異なります。同国では通信大手のベル・カナダやSaskTelが、電話ボックスをインターネット対応のホットスポットに改造するプロジェクトを試みたものの、最終的に放棄してしまいました。利益性の低さが主な要因だと見られています。 この背景には、カナダの通信企業ビジネスモデルの問題があります。電話ボックスはかつての主要な通信インフラでしたが、無線サービスと比べると利益率が低いため、企業側のインセンティブが働きにくいのです。その結果、低所得層や携帯電話を持たない人々といった、公共の通信アクセスに最も頼る層が取り残されることになっています。 1990年代初頭、ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州だけで約38,000台ものテルス電話ボックスが存在していました。しかし現在、その数は劇的に減少しています。残された電話ボックスは、遠隔地でのセーフティネット、低所得者が長距離通話に使用する最後の手段として、依然として重要な役割を担っています。 カナダの政策立案者や市民の声からは、「新しいアイデアが長年必要とされている」という指摘が上がっています。都市のインフラを再活用し、誰もがデジタルサービスにアクセスできる環境を整備することは、単なるテクノロジー投資ではなく、社会的包摂の重要な課題なのです。ニューヨークの先例が示すように、古いインフラの再生は、創意工夫と政治的意志があれば十分に実現可能です。