ケニアのファッションシーンで、いま密かに注目を集めている「グラマコア」というトレンドがある。古き良き時代の装いから色気と知性を引き出す、大人向けのスタイルムーブメントだ。 若い世代を中心に広がるこのトレンドの背景には、単なるレトロブームではない思想がある。ケニアのファッションデザイナーたちは、ヴィンテージ感を備えた装いが「意味、歴史、質感、そして快適さ」をもたらすと語る。高いウエスト位置のショーツや、ボディラインを自然に見せるシルエットといった過去の時代の設計を、現代的な感覚で再構築していく営みだ。 ナイロビを中心とした都市部では、デジタルプラットフォームを通じてこのスタイルが急速に拡散している。TikTokなどのSNSを起点に始まったトレンドは、いまやファッション業界全体を巻き込んでいく。Thrift Social Nairobiなどのイベントでは、ヴィンテージ美学と現代的なケニア都市文化の融合を示す作品が次々と披露されている。 興味深いのは、このトレンドがジェンダーの枠組みを超えた表現へと進化している点だ。ケニアのファッションシーン全体として、従来の性別にとらわれない自由な装いが増え続けている。大人としての色気とは、単なる身体の露出ではなく、時間をかけて培われた知識や経験がにじみ出る装い方にあるという認識が、静かに広がっているのだ。 快適さと洗練さを両立させるグラマコアは、東アフリカの若い大人たちが、自分たちらしい色気とは何かを問い直すプロセスでもある。ナイロビの街角に、新しい「大人の装い」の形が生まれようとしている。