ペットが家族の一員へ——アラブ首長国連邦で急速に広がる「ペットの人間化」の波
かつて欧米や日本の専売特許だった「ペットを家族の一員として扱う」という文化が、意外な場所で根付きはじめています。中東のアラブ首長国連邦(UAE)です。
数字からその変化は明らかです。2014年時点でUAEに暮らしていたペットは約58万8000匹でしたが、2025年にはその数が200万匹を超えました。ペット所有者も約150万人以上に達し、特にコロナ禍を境に、30%以上の急速な成長が記録されています。
興味深いのは、この成長が単なる動物を飼う行為から、ペットを「人間化する」――つまり家族と同じように大切にする文化へのシフトを意味していることです。一度は外国人駐在員が持ち込んだ現象だったこの習慣は、いまや所得階層や文化的背景を超えて広がっており、ドバイ、アブダビ、シャルジャといった主要都市では特に顕著です。
ペット関連の経済圏も目覚ましく拡大しています。ペットフード市場だけで2024年時点で1億700万ドルの規模に達し、年5%程度の成長が見込まれています。一方、オンラインショッピングやアクセサリーを含むペット関連のe-コマース市場は、2030年までに3億ドルを超える見通しです。
ペット関連業界全体では、2024年時点で3億6000万~4億ドルの規模に達しており、プレミアム食品、グルーミング、獣医サービスといった高付加価値サービスへのニーズが急速に高まっています。特に注目されるのが、オーガニックや自然素材を重視したペットフード、さらには個別カスタマイズされた食事メニューといった「ぜいたく志向」の選択肢です。
ペットシッティング市場もまた、年14.7%という驚異的な速度で拡大中。2024年の2550万ドルから2030年には4410万ドルへと倍近い成長が予測されています。飼い主が外出する際にペットを自宅で世話するサービスが急速に需要を増やしているのは、ペットを単なる動物ではなく、心理的・感情的な結びつきが強い存在として見なす姿勢の表れといえるでしょう。
さらに興味深いのは、ペットの種別による違いです。伝統的にイスラム教の文化圏では猫が「清潔で神聖な動物」とされてきたため、猫関連商品は依然として市場シェアの大部分を占めています。一方で、犬の採用率が最も急速に伸びており、特にヴィラコミュニティなどに暮らす若い専門職や家族層が牽引役となっているとのこと。
こうした変化は、UAEが単なる経済大国から「ペット先進国」へと進化していることを示唆しています。同時に、グローバル化する都市部では、ペットへの向き合い方も世界的な価値観へと収斂していくという、興味深い社会現象を垣間見せてくれるのです。